器の水際
器は何かの容れ物である。
棚にしまっている時でさえ、その内なる空間に何かを湛えている。
何を容れる入れる淹れる挿れる煎れる炒れる?かを問わず、ある時は溢れ出る泉のようであり、ある時はあの雨の日に見た水溜りのようでもある。
器の容れ物としての機能は重力なしに働き得ない。
あらゆる器は重力と仲が良い。
あらゆる男女は、星である。
星とは引力である。
引力(重力)という力学的作用を象徴的に扱うものとしての器学。
ぐい呑みに揺れるウイスキーを眺める。
その度に水面はきらめき濁る。
水際、波打ち際はあちらとこちらの境界である。
ウイスキーの波打ち際は器と溶け合い、言語的分断を超えて、海と陸の境界など存在しないと語る。
陶器の表面に存在する釉薬層と粘土層の間に存在する中間層というまどろみ。
現実と非現実のあわいに存在する器現象への詩的アプローチ。
肉体と精神。
その間のまどろむ境界。
人間と間抜け。
まつろわぬ神。
堕天使。